2006'12.09 (Sat) 04:03

今まで僕は、原作の真琴シナリオを覚えてない、と言ってきました。
今まで、オブラートに包んだ表現をしてきましたが。
正直に言います。
原作の真琴シナリオ、
全くついていけなかったです。
ノリが合いませんでした。
感情移入はありませんでした。
面白くありませんでした。
もう一回やろうという気になりませんでした。
要するに、自分には合いませんでした。
少しも泣きませんでした。
でも、この京アニ版kanonの真琴シナリオは、

泣いた。
あまりにも完成度が高いです。
これに対して何かを言うのは、僕では正直蛇足にしかなりえない。
なのでこの先は蛇足です。
【More】
「見れば分かる」という言葉がありますが、正にその通り。
「見れば分かる」ので見て下さい。
アニメーションの特徴、「動的である」ということを最大限に生かしていると思います。
視覚・聴覚に対する情報に動きがあること、それによって、小説やノベルゲームのように視聴者側がテンポをコントロールできるのではなく、製作者側がテンポをコントロールできるということ。そして今作の、映像と音楽・そして製作サイドが作り上げたテンポが素晴らしすぎるということ。
もちろん、僕にそういった関係の学がある訳ではないので詳しい事は分かりませんが、でも原作ゲームに感動も何も持てなかった僕がこのアニメで泣けるのは、アニメならではの表現力に依るところが大きいのではないかと思います。

僕は原作シナリオ全く覚えてません。真琴のラストがどうなるかも全然わかりません。これが原作に忠実なのかどうかも、他サイトさんの感想などを見て初めて分かったくらいです。今までの話も、ついていけなくて半分くらいしか理解出来ていない様な感じです。
それでも、原作知ってなくても、話の理解が半分でも、映像と音でこれらが真琴とのお別れの準備だというのが分かります。いわゆる状況説明を全然行わない作品でこれは凄い事だと思います。
文章と、わずかな絵で表現するゲームに対して、
映像と音(勿論声含む)で表現するアニメ。
だからこそ「京アニkanon」には状況説明やモノローグが少ないんじゃないでしょうか。
「kanon」という物語は、ゲーム向きにカスタマイズして作られてはいますが、あくまでも物語の表現媒体としてのゲームであって、ゲームありきのkanonではありません。
つまり、ゲームに一番向いているのは事実ですが、小説用に手を加えれば小説に、アニメ用に手を加えればアニメにできる。勿論細かい部分での変更は行われますが、決してエッセンスを失う事はない。「kanon」という物語は、ゲームでしか表現できないものではない、ということです。
文章と、わずかな絵で表現するのがノベルゲームならば。絵と音で表現するのがアニメーション。「絵」と「音」だけでここまで作り上げた京アニ版kanonは、「kanon」という物語をアニメという舞台で最高に表現しているのではないでしょうか。

さて、いつものとおり、真琴シナリオについては余り書ける事ないので、少し天野さんを。(真琴が祐一を待ってたのと同じ様な配置。ここまでくると、上手いというより小憎らしくなってくる(苦笑))

いやはや、天野さんと祐一との対話シーンはもの凄く良いですね。人は、警戒している相手は自分の左側には立たせたくないと言いますが、今回は思いっきり祐一を左側に立たせています。
前回の歩道橋の会話シーンでは、途中から左側に立っていましたが、それ以前は全て右側。二人の距離と会話時間との相関も、徐々に徐々に親密に近い関係になっていってます。

ラストの会話シーンも言う事なし。

8話の会話シーンと同じ場所。「あの子とは友達になりません」「これ以上私を巻き込まないで下さい」と言った場所。これとの対比。ラストの会話時の天野については当然語るまでもないですね。
いやもう本当素晴らしすぎます。
天野というキャラクターについて。
ストーリーを回すだけなら別に天野がいなくても回せる。狐についての説明なら、なんかの書物やら伝承やらでもできる。なのになぜ天野が登場したのか。
真琴の行動は、天野の台詞から察するに「人のぬくもりに憧れた・求めた」。天野は、かって人に化けた狐との悲しい別れから、人のぬくもりを拒絶した。けれど祐一と真琴に会って、もう一度ぬくもりを求めようと思った。
つまり天野の台詞、
「春になれば、またあの子たちは丘を走り回るんでしょうね。
小さな営みの中、また新しい命が生まれ、育まれて。
そしてまた、人のぬくもりに憧れる子が出てくるのでしょね」
の通り。
いや、別に天野が狐ということじゃなくて、真琴達の「人のぬくもりに憧れる」に感化された人物。要するに、テーマ的に見れば、天野は人のぬくもりの大切さ・素晴らしさを表すためのキャラクターであり、物語的に見れば、真琴の存在意義を表すキャラクターの一人、もの凄く大雑把に言えば、「真琴の友達」。

はぁ~参ったな、全てが素晴らしすぎる。
今回のkanonは素晴らしすぎて、ちょっと書くたびに溜息が出ちゃって全然文が進みません。なんだかずっと「ぽわぁ~ん」って感じになっちゃってます。
美汐はもう殆ど出てこないんでしょうね。
彼女はもう得るものは得たし(端的に言うと、この笑顔のことですw)、彼女のお話は終わったのだから、当然といえば当然なんですけど、ちょっと寂しい。
え~、こっからは相変らずの妄想、スーパー駄文です。
今回のkanonの感動を残しておきたいお方は見ないほうが良いかも知れません。

さて、今回で一つ明らかになったことがあります。
皆さんも危惧されている通り、「恋愛」について。
京アニ版kanonについて、オムニバス形式で作ることは無いと既にアナウンスされています。つまりこのままの流れで、次の話に進むということでしょう。
となると、恐らく次回以降に誰もが思うのが、「真琴と結婚するまで言っときながらもう別の女の子にアタックか(超苦笑)」。
まあ実際問題、祐一は他の女の子とも恋愛関係なりますよね、コレ。
なんせ真琴の話は、kanonの中でも一・二を争うくらい恋愛要素を除外しても作れる話なのに、そこに恋愛要素を入れてしまったのだから。真琴で恋愛要素入れておきながら、栞や名雪やあゆで恋愛要素入れなかったらそれこそ意味わかんないかスタッフに真琴スキーがいるだけという話になってしまいます。
(今回の真琴シナリオに関して、祐一の中では「恋愛」という気は無いのかも知れないですが、「結婚」なんかを口にするくらいではさすがに視聴者が恋愛要素に結び付けて判断することくらい製作側も十二分に承知だと思うので、事実としての祐一の恋愛感情よりも視聴者の受け取り方としての恋愛感情の方を重視させていただきます)
このまま他のキャラにも恋愛要素織り交ぜて進むと、
「さすがギャルゲー主人公」「祐一最強ジゴロ伝説」「まさに外道」
と視聴者が思ってしまうことは目に見えている。というか、思いますよね、さすがに(笑)。
で、これに対する製作側の対策はどんなのがあるか。
取り敢えず僕の思いつく限りでは4つ。
1つ目が、祐一五股、アニメ史上最悪の鬼畜主人公になる説(笑)。
つまり説明も対策も何もしないって事です。
さすがにというか、99%これになる可能性はないでしょうが(もしくはコレと見せかけて、深読みすると真意が分かる、なんていう可能性はありますが)、一応念の為可能性として上げておきます。
2つ目が、実は本命以外、祐一は恋愛感情持ってないよ説。
今回の真琴に関しても、祐一がはたして恋愛感情を持っていたのかどうかは明らかではありません。この調子で、以降のキャラクターに対しても恋愛感情あるんだかないんだかで接していくパターン。
さすがにこれじゃグダグダになりかねないので、やらない可能性も高そうですが、いちおう上げておきます。
(それでも京アニなら……それでも京アニならきっとなんとかしちゃいそうな気がするけど……)(これをデコイにするってのもありえそう)
3つ目が、全てが夢説。
祐一の思考の不整合さ(アレを不整合と決め付けている訳だがw)から逆引きむしろこじつけ的な考えですみませんが。
今回の天野との会話シーンでの台詞の一つ。


「それと気付いていないだけで、みんな人ではないのかも知れません。
この私も。そしてあなたも」
これを、前の文脈、つまり狐どうこうというのを一端無視して、それでいて言葉通りに受け止めるとして。
それと祐一の台詞。
「同じ夢を見てたんだよな、俺たちは。……そして、そこから帰ってきた」
『同じ夢を見てた』つまり、祐一は狐が人に化けて出てくる現象を『夢』と述べています。ちなみにこの現象の別の呼び名は『奇跡』。
つまり、奇跡=夢であると。
そして、『そこから帰ってきた』と。奇跡を夢に見立て、それ以外を現実に見立てています。
この二つの事を足すと……非常に手前味噌で恐縮ですが、僕が何度か言ってきたように『夢・非現実』が思い浮かばないでしょうか。
つまり、kanonという物語はあくまで夢の世界のお話。登場人物達は夢の世界の住人であって人ではない。夢の中でのお話しなのだから、祐一が沢山の人好きになるとか、実はもう2月くらいになってるとかの物語内の不整合は全く持って問題なくなる。
(恐らく明かさないと思うけど(明かしたらkanonが骨抜きになっちゃうから))夢だから不整合も非現実性も問題なくなる、と。夢でなく仮想世界というのも考えられます。
4つ目はあまりにも空気ブチ壊すので、あとで次エントリーに書いておきます。(3つ目とほぼ同じだけど、ふざけすぎてるんで(苦笑))

それともう一つ。
真琴シナリオは、原作のシナリオとほぼ同じなんですよね?
あくまで僕の想像なんですけど、ここで後々に無理が出るということを分かった上で、真琴シナリオを原作とほぼ同じに作るということは、他のキャラのシナリオも原作とほぼ同じに作るのではないでしょうか。
全員のトゥルーシナリオをやるんじゃないかと思います。
だからこそ、整合性を失っても言い訳できるような手を打っているんじゃないかと思うわけです。
ちなみに、全員のトゥルーシナリオを行う理由は、『「kanon」という物語のエッセンスを表現する為にどうしても必要だから』。
まあ何がkanonのエッセンスかなんて勿論僕に分かる訳ないんですが(笑)、これだけkanonを本気で作っているのに、こんな大事な所で片手落ちな事態になることはないのではないかなぁと思いますので。
物語の整合性なんかよりは、物語のテーマ性の方が大事でしょうし。(とはいえ、エッセンスを失わない代替案があれば、そっちを使うか。)
しかしまあ、今回のkanonは本当に素晴らしかった。以下自慢です、すみません。
しっかりと原作のシナリオ覚えている人はそれはそれで不満があるみたいなんですが(何件か感想見させて頂いたら、「アレがカットされてたのが痛い」「コレが短かったのが残念」とかいうの拝見しましたので)、僕のようなイマイチ覚えてない人間にはこの上なく最良でした。
全く原作知らない人では、舞い落ちる桜の花びらと、
リトルフラグメンツ~生まれたての風~風の辿り着く場所
の原作と同じくの最強コンビネーションが意味を持たないので片手落ちになってしまう分、やっぱり原作をイマイチ覚えてない人には最高過ぎるんじゃないかなと。(すみません、どう見ても自慢です。ご勘弁を)。
原作発売から7年。
物語の舞台は、7年ぶりに帰ってきた冬の街。
7年振りに見た「kanon」という物語は、ゲームからアニメに変わっていたけれど、本当に最高に「kanon」でした。
アニメの出来も最終回みたいだったけど、僕の感想も最終回みたいになってしまった。
ただまあ、今回のように、「まるで最終回みたいだ」と思うことは、あと最低三回はあるんだろうなぁ……(笑)
WEB拍手を送る

「春が来て……ずっと春だったらいいのに」
(ものみの丘を見ると、「春」ってこの「奇跡」のことなのかな…とも思った。)
スポンサーサイト
テーマ : Kanon~カノン~ - ジャンル : アニメ・コミック
この記事のトラックバックURL
→http://bdkiss.blog54.fc2.com/tb.php/161-e43e8102
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
Kanon 第10話 丘の上の鎮魂歌(レクイエム)-requiem-あらすじ&レビュー
(必要なのはタオルと水分補給)■祐一の部屋の前 朝部屋から出てくる祐一[相沢祐一] じゃあ、ちょっと出かけてくるからな、真琴祐一、中にいる真琴と秋子に声をかける[沢渡真琴] あうー[相沢祐一] ほら、人を送り
2006/12/09(土) 07:32:39 | アニすじ! アニメあらすじ&レビューblog
なんというかレビュー泣かせのアニメですね。確かにアニメレビューを義務だと思い込んではいけませんが、レビューするためにアニメを観ているといった本末転倒な事になっているのもまた事実。だからこそ涙を流しつつも頭の中ではあれこれと書くことを考えている自分が腹立た
2006/12/09(土) 09:02:15 | マニア研究所
(アニメ感想) Kanon 第10話 「丘の上の鎮魂歌(レクイエム) ~requiem~」
Kanon 2徐々に人間らしさを失っていく真琴。そんな彼女を優しく見守る名雪と秋子。祐一は、やがてその時が近づいていることを自覚し、美汐に真琴にあって欲しいと頼むのでした・・・。
2006/12/09(土) 11:41:22 | ゲームやアニメについてぼそぼそと語る人
(アニメ感想) Kanon 第10話 「丘の上の鎮魂歌(レクイエム) ~requiem~」
Kanon 2徐々に人間らしさを失っていく真琴。そんな彼女を優しく見守る名雪と秋子。祐一は、やがてその時が近づいていることを自覚し、美汐に真琴にあって欲しいと頼むのでした・・・。
2006/12/09(土) 11:41:24 | ゲームやアニメについてぼそぼそと語る人
Kanon prelude何とも微妙な話でありますな。祐一は真琴が狐だという事を信じている様ですが、そう信じる材料があまりに少ないので私は信じられません。これはそういう設定が駄目とかそういう事ではなく、ストーリーの見せ方として駄目だという事ですわ。この見せ方...
2006/12/09(土) 12:02:01 | シバッチの世間話
今日のような日には、自分がレビュアーであることが心底恨めしく思えます。この気持ちを温めたまま、寝床に潜り込んで全てを送り出すことができたなら、どんなに幸せだろう、って。それに、私が彼女について語れる言葉など、決して多くはないのです。これだけ多くの思いに
2006/12/09(土) 12:35:25 | Old Dancer's BLOG
Kanon 第10話 「丘の上の鎮魂歌 ~requiem~」
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ真琴編が終わってしまった・・・
2006/12/09(土) 14:58:33 | まったり~隠れヲタ日記!
TVアニメ Kanon 第10話 丘の上の鎮魂歌 ~requiem~ 感想
「TVアニメ Kanon」まあ、ぶっちゃけあまり言葉にならない。どうにもこうにも言葉にならないのが本音ですけど。とにかく丁寧に綺麗に描かれていたな。そして、寂しいんだけど暖かい。それだけは言えると
2006/12/09(土) 15:11:30 | 空色なおれの日々
第10話「丘の上の鎮魂歌~requiem~」寂しがる真琴を秋子さんに託して、祐一は1人出かける。学校の校門前。祐一は天野未汐と出会い――祐一は語る。真琴はもう言葉を話せない、人間らしい感情が失われかけている。真琴は、祐一以外の人間には気を許していない、心のどこかで
2006/12/09(土) 15:48:39 | 夢の日々。
だからっ……1クールでいいじゃないかっっ。゚(゚´Д`゚)゚。ファンの方々に比べると、どちらかと言うとアニメ版Kanonの視聴にはあまり思い入れが無いのですが、このような否定的な立ち位置を真っ向から変えてくれる完
2006/12/09(土) 21:31:01 | 万聞は一見に足るやも
とうとう、真琴は去ってしまいました。この真琴の話は、去り行くものを残される者はどう見送るか、その理想論が見えたような気がいたします。ただ単純に「お前の事を忘れない」と言うよりも深い次元で、ふか~く想う事で…kanon Original Soundtrack KSLA-0006このCDが
2006/12/10(日) 00:01:51 | 「きつねのるーと」と「じーん・だいばー」のお部屋
もし、奇跡を起こせたら…相沢さんなら何をお願いしますか?束の間の奇跡の終わる時――。真琴と見た夢のおわり。願いは成就したのか? 少女は幸せだったのか…真琴編、終章です…
2006/12/10(日) 10:34:19 | SERA@らくblog
隊長!涙で前が!!画面が見えません!!!。・°°・(;>д
2006/12/10(日) 18:03:30 | 神音の萌え源泉
真琴編最終回!!正直あまりにも良すぎて書くことほとんどありません。何を言っても陳腐な感想になりそうだったので今回は シンプル イズ ベスト!!べ、別にめんどうだから簡単にしようとか思って
2006/12/12(火) 19:11:58 | アバトーンの理想郷
■Kanon■
2006/12/13(水) 02:43:36 | King Of ヘタレ日記
全く・・・話云々よりまず京アニの演出が憎い・・・!この淡い配色は卑怯だって言ったでしょ!
2006/12/13(水) 18:30:38 | どこまでも高みへ
【感想】『Kanon』第10話「丘の上の鎮魂歌 ~requiem~」
あけましておめでとうございます。 今頃になってからのTBをお許し下さい。 今年もよろしくお願いします。
2007/01/04(木) 00:08:12 | 『遍在 -omnipresence-』
| BLOGTOP |