2007'10.14 (Sun) 02:31
※以下には、京都アニメーションの「CLANNAD」2話の内容が含まれています。
アニメのネタバレになりますので、閲覧の際にはご注意下さい。
人はみんな別々に生きていて、同じ時を過ごす他人なんて滅多にいない。
出会い、というだけなら腐るほどあります。職場の同僚や学校の同級生、コンビニの店員から道ですれ違った人まで。人は1日の中で、たくさんの他人に出会います。でも、その殆どは、出会ったといってもただ在っただけで、そこから友達になったり恋人になったりといった発展が起こることは、そうそうありません。
誰かと出会うことはたくさんあるけど、それだけで、その誰かとの関係が発展することはそうそうない。
出会った。あった。自分という人が在って、他人という人も在って、出会う。それだけなら、ただ『会う』ということだけ。会った以上の関係を築きたければ、最初の一歩を踏み出さなければならない。逆に言えば、最初の一歩を踏み出せば、その道が見えてくる。

たとえば、ふらっと立ち寄った図書室に女の子が座っていた。物音が聞こえた教室を覗いて見たら、彫刻を削る女の子がいた。
朋也が歩けば女の子にあたるって勢いだけど、相手がちょっと不思議な人だということを除けば、あってもおかしくないこと。授業サボって図書室に居る人もいるだろうし、空き教室でなんかやってる人もいるでしょう。それと出会うなんてことは、別段おかしくはない。でも、それだけならば、ただの『出会い』。
道端ですれ違った他人や一言二言交わしただけの他人のように、出会った相手がちょっと不思議な人であるということを除けば、誰にでもいくらでもある、このまますれ違って忘れ去ってしまうような出会い。

でも、ここから。
箸がないにも関わらず、手で卵焼きをつまんで戴いたり。手を怪我する相手を慮って、彫刻等を奪い取ったり。
『最初の一歩』を踏み出せば、すれ違うだけだった相手とも、関係が持てる。
ほうっておけばただすれ違うだけの出会いも、行動を起こすことによって、すれ違わない、これからはじまるその道の『最初の一歩』になる。
風子・ことみに比べると、杏・智代は少し違う感じです。
風子・ことみは、上に記したように朋也から近づいていった感が強いのですが、杏・智代は向こうからも近づいている感がします。
人はみんな別々に生きていて、その間には確実に距離が存在しています。今回の前半部なんかでは、歩道の実線とか、廊下の白線とかの明確に存在する区切りで、その辺を暗喩的に表現していたかなぁと思いまして。

たとえば冒頭の渚の「お連れしましょう…」後のシーンでは、渚は朋也に近づいてきますが、それは公園の外側の歩道からは決して出ないという距離でした。
自宅の前という自分のフィルード内の公園、かつそこで演劇の練習をしていたこれは、自分から朋也に演劇部再建のお手伝いを強く要求しない姿勢と同じく、きっとりと、この二人の間に境界がある、ということを表しているとも思えます。でも、(朋也が手伝うとは言え)一人で演劇部再建することに歯切れの悪い返事をするように、ひとりでは不安で勇気が足りなくなっちゃうからこそ、演劇を見せたり、少し近づいたり(公園から出てきたり)もする。
でもまだ、それだけでは、そこには違いが残っています。渚のやることは演劇部の再建で、朋也のやることはそのお手伝いで、同じ道を歩んでいるといえるわけですが、考えも動機(多分、あとあと描かれると思います)も、それぞれ少し違う。そういった距離が、ここで描かれている距離でもあるのかな、と思えるのです。
その距離を飛び越える最初の一歩。ひとまず渚は置いておいて、風子・ことみは前述のように朋也から近づくといった感じですが、それに比べるとたとえば杏なんかは、彼女の方から近づいているといった感じがします。

歩道―車道という明確な境界を飛び越えて朋也に突っ込んできたり、違うクラスという区切りを飛び越えて朋也に絡んできたりします。そこに存在している境界や区切りを自ら飛び越える。朋也の能動的な行動というより、杏自身の能動的な行動がその道を作り出している感じです。
(相手からも近づくけど)自分から近づく前者と、(自分からも近づくけど)相手から近づく後者。その違いは、朋也自身に見て取れるでしょう。面倒見の良さとか、さりげない優しさを披露することみ・風子・渚に接する時と違い、大胆でコミカルな面を見せる。(クラスで浮いてるはずの朋也が)教室で大声で「D組の藤林杏ってバイなんだぜー!」と叫んだりする。朋也の「そういう面」が出ている、いや正確には杏に出させられている、ということです。
それは他のキャラクターでもそうでしょう。ことみ・風子は次回以降の内容に絡んでくるので置いておいて。渚には、面倒見が良い朋也。春原には、だらけて諦観じみた朋也。
これは朋也だけに限らず、相手側にも言えますね。

智代に絡む春原(&朋也)のシーン、廊下の立ち位置が彼らの位置の暗喩的であって。智代に素で絡む春原と、決して智代に絡むつもりはない朋也との間に、決定的な境界として横たわる白線。その線の真ん中、つまり絡まれるのなら対応するけど自分から絡むつもりはない(少し朋也側よりなので、絡みたくない気持ちの方が強い)、という場所に位置する智代(しかも春原・朋也と大きく距離を取っている)。
最初はこういう位置でありながら、春原をボコっている内に、それなりに楽しめた智代。ただ迷惑で二度と来て欲しくないなら、何も言わずに去ればいいのに、「昔を思い出した」と、少しだけ、楽しめたことを告げる。迷惑ではあるけど、ちょっとくらいなら好ましいものでもある、ということを示唆しています。線の区切りも無くなって朋也と正面から向かい合って喋るのですが、動いていれば立ち位置なんて変わるから線がどうこうなんて関係なくなるんだけど、その動いて楽しめた結果、心の立ち位置が変わって、朋也と向かい合い喋る。
こうやって春原や朋也に付き合える智代は、他の他人と一緒に居る時の智代とは少しだけ違う。
他人との出会い。すれ違いにならずに、少しでも同じ時間を過ごせたら、少しでも同じ道を歩めたら。それが少しづつ、自分を変えるものになっていく。

「とんかつっ!」
自分を励ますため、自分が食べたいものの名前を言う。
自分で自分にご褒美。それはおかしなことじゃない、朋也が言うように「変じゃない」のですけど、でも、『ひとりぼっち』だということを強調していることでもあります。自分をはげますのが自分自身で、自分にごほうびをあげるのも自分自身。
空しい一人回しでもあるし、それ以上に、これで何処まで力が続くのか・出せるのか。
演劇部の扉を開く為に、学校の坂を登るたびに。あんぱんやハンバーグと言うだけで、自分にご褒美を与えるだけで。はたして、何処まで頑張れるのか。いや、それ以前に、ご褒美があっても足が進まないような困難や壁にぶつかった時、はたして、どうやってその先に進めるのか。あんぱんやハンバーグやとんかつと言った所で、一歩も、勧めない時。からかわれて、悲しくなって、落ち込んで。そこから、ひとりで、ただ好きな食べ物を頼りに、先に歩いていけるものなのか。
ひとりでは、ひとり(自分)の限界から先へは、どうしたって進めない。

だから。
朋也の、「とんかつより、だんご大家族買って帰ろうぜ」という台詞に、満面の笑みを浮かべる。もちろん、とんかつよりだんごを食べたいからじゃなくて。一人じゃなくて、一緒に居てくれる人がいることに。朋也が……誰かが、自分のために何かをしてくれるということに、とんかつやあんぱんと言って自分で自分を励まさなくても、自分を励ましてくれる誰かが隣にいてくれることに。自分ひとりでないということは、本当に、勇気を与えてくれるものだから。
だから、踏み出せるのです。『最初の一歩』。

「朋也は本当は今も、バスケがやりたいんじゃないかな?」と思った渚が、朋也をバスケットボールに誘う。
誰に強要されたわけでもないし、誰も求めているわけでもない。ただ、そうしたいから。自分のために色々してくれる朋也に、自分も何かをしてあげたいから。渚自身のように、自分ひとりでは踏み出せないなら…そのお手伝いをしてあげたい。自分を励ましてくれたり、勇気を与えたりしてくれた人に、自分もそのようなことをしてあげたい。
誰に強要されたわけでもないし、誰も求めているわけでもない。でも、自分自身で、そうしたいと思ったから。助けられるだけじゃなくて、助けたい。そういう意思の表れ……渚が『自発的に』朋也に何かをする、その『最初の一歩』です。
そして、朋也にとっても。

三年も前に怪我した右肩、上がらない腕、まだ嫌いにすらなっていないバスケ。
三年前の怪我ならば、それに諦めも決着も自分の中ではある程度ついているでしょう。きれいさっぱり何とも思っていない、なんてことは、風子のドリブルシュートの後の一瞬の躊躇から見て取れるように、恐らく無いでしょうが、風子にバスケの話題を自分から持ち出せるように、そこに強い悲壮感は無い。
悲壮感はないけれど……渚に、そのことを言わずにいた。
朋也がなんでここまで渚に優しくしたり励ましたりするのかというと、渚に「求められている」という面が大きいかと思います(現時点では)。なんとなく手を貸したら、それに応えてくれて。ひとりじゃすぐ立ち止まっちゃうから、なんとなく手を差し伸べたくなって。自分のやることが、確実に渚のためになり、自分が何かしないと、きっと渚は立ち止まってしまう。朋也が何故わざわざ、渚のために何かするのか。何でわざわざ、団子を買ってきてだんご大家族を作るのか。それが渚のためになると分かっているから。自分が誰かのためになれて、だから、自分が誰かに必要とされている。あくまで、この時点での、一番の動機。
そんな、励ます対象であり、勇気付ける対象である渚だからこそ、励ますことにも勇気付けることにも繋がらない、自分の怪我のことを黙っていた。
でも、そのことを打ち明ける。これを言って、渚が励まされるわけでもない。喜ぶわけでもないし、勇気付けられるわけでもない。そんなことを言うということは。励ます必要があるから・勇気付けた方がいいから一緒に居る、ということから脱却すること。学校に向かう坂道で立ち止まる背中をなんとなく押してあげたり、ひとりでは遅々として進まなそうな演劇部再建をちょっとだけ後押ししたり、そして演劇部が再建できて一人でやっていけるようなら……もう自分が必要ないようなら、渚の隣にいなくてもいい。
そういった関係からの脱却。深く付き合うための、最初の一歩。
このうなだれる姿は、悔恨でも、悲しみの吐露でもなく、自分が渚を励ますだけでなくなってしまうことへのうなだれ。渚のためだけでなく、自分自身を語り、自分自身を知ってもらい、そこからはじまる新しい道。そこへの、『最初の一歩』。
ただ励ますだけという朋也と、ただ励まされるだけという渚。その境界を越える、最初の一歩。

この世界に生まれてくれることを望み、この世界に生まれることを望む。
もうひとつの世界の方でも、それぞれが『最初の一歩』目を踏み出しました。
望み、生まれて、望まれ、生まれる。
選択し、選択させられ、日々踏んでいる一歩一歩は、関係を少しづつ変えていきます。踏み出さなかったという選択肢は既に選べなくなっている。昨日までは明確にあった境界線はいまはもうないか、別の所に引かれている。その先には、この一歩を踏み出したからこそ得る幸せと、この一歩を踏み出したからこそ得る辛さが、たくさん、あるでしょう。
でも、それを無かったことにはできない。
出会ってしまい、声をかけて、接触して、接触されて、必要とされ、必要とする。選択肢を選び取る、その『最初の一歩』。その積み重ねで決まっていく道。はたしてそれは、何処に続いていくのか。どういった次の一歩を踏み出していくのか。その先が楽しみです。
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アニメのネタバレになりますので、閲覧の際にはご注意下さい。
【More】
人はみんな別々に生きていて、同じ時を過ごす他人なんて滅多にいない。
出会い、というだけなら腐るほどあります。職場の同僚や学校の同級生、コンビニの店員から道ですれ違った人まで。人は1日の中で、たくさんの他人に出会います。でも、その殆どは、出会ったといってもただ在っただけで、そこから友達になったり恋人になったりといった発展が起こることは、そうそうありません。
誰かと出会うことはたくさんあるけど、それだけで、その誰かとの関係が発展することはそうそうない。
出会った。あった。自分という人が在って、他人という人も在って、出会う。それだけなら、ただ『会う』ということだけ。会った以上の関係を築きたければ、最初の一歩を踏み出さなければならない。逆に言えば、最初の一歩を踏み出せば、その道が見えてくる。

たとえば、ふらっと立ち寄った図書室に女の子が座っていた。物音が聞こえた教室を覗いて見たら、彫刻を削る女の子がいた。
朋也が歩けば女の子にあたるって勢いだけど、相手がちょっと不思議な人だということを除けば、あってもおかしくないこと。授業サボって図書室に居る人もいるだろうし、空き教室でなんかやってる人もいるでしょう。それと出会うなんてことは、別段おかしくはない。でも、それだけならば、ただの『出会い』。
道端ですれ違った他人や一言二言交わしただけの他人のように、出会った相手がちょっと不思議な人であるということを除けば、誰にでもいくらでもある、このまますれ違って忘れ去ってしまうような出会い。

でも、ここから。
箸がないにも関わらず、手で卵焼きをつまんで戴いたり。手を怪我する相手を慮って、彫刻等を奪い取ったり。
『最初の一歩』を踏み出せば、すれ違うだけだった相手とも、関係が持てる。
ほうっておけばただすれ違うだけの出会いも、行動を起こすことによって、すれ違わない、これからはじまるその道の『最初の一歩』になる。
風子・ことみに比べると、杏・智代は少し違う感じです。
風子・ことみは、上に記したように朋也から近づいていった感が強いのですが、杏・智代は向こうからも近づいている感がします。
人はみんな別々に生きていて、その間には確実に距離が存在しています。今回の前半部なんかでは、歩道の実線とか、廊下の白線とかの明確に存在する区切りで、その辺を暗喩的に表現していたかなぁと思いまして。

たとえば冒頭の渚の「お連れしましょう…」後のシーンでは、渚は朋也に近づいてきますが、それは公園の外側の歩道からは決して出ないという距離でした。
自宅の前という自分のフィルード内の公園、かつそこで演劇の練習をしていたこれは、自分から朋也に演劇部再建のお手伝いを強く要求しない姿勢と同じく、きっとりと、この二人の間に境界がある、ということを表しているとも思えます。でも、(朋也が手伝うとは言え)一人で演劇部再建することに歯切れの悪い返事をするように、ひとりでは不安で勇気が足りなくなっちゃうからこそ、演劇を見せたり、少し近づいたり(公園から出てきたり)もする。
でもまだ、それだけでは、そこには違いが残っています。渚のやることは演劇部の再建で、朋也のやることはそのお手伝いで、同じ道を歩んでいるといえるわけですが、考えも動機(多分、あとあと描かれると思います)も、それぞれ少し違う。そういった距離が、ここで描かれている距離でもあるのかな、と思えるのです。
その距離を飛び越える最初の一歩。ひとまず渚は置いておいて、風子・ことみは前述のように朋也から近づくといった感じですが、それに比べるとたとえば杏なんかは、彼女の方から近づいているといった感じがします。

歩道―車道という明確な境界を飛び越えて朋也に突っ込んできたり、違うクラスという区切りを飛び越えて朋也に絡んできたりします。そこに存在している境界や区切りを自ら飛び越える。朋也の能動的な行動というより、杏自身の能動的な行動がその道を作り出している感じです。
(相手からも近づくけど)自分から近づく前者と、(自分からも近づくけど)相手から近づく後者。その違いは、朋也自身に見て取れるでしょう。面倒見の良さとか、さりげない優しさを披露することみ・風子・渚に接する時と違い、大胆でコミカルな面を見せる。(クラスで浮いてるはずの朋也が)教室で大声で「D組の藤林杏ってバイなんだぜー!」と叫んだりする。朋也の「そういう面」が出ている、いや正確には杏に出させられている、ということです。
それは他のキャラクターでもそうでしょう。ことみ・風子は次回以降の内容に絡んでくるので置いておいて。渚には、面倒見が良い朋也。春原には、だらけて諦観じみた朋也。
これは朋也だけに限らず、相手側にも言えますね。

智代に絡む春原(&朋也)のシーン、廊下の立ち位置が彼らの位置の暗喩的であって。智代に素で絡む春原と、決して智代に絡むつもりはない朋也との間に、決定的な境界として横たわる白線。その線の真ん中、つまり絡まれるのなら対応するけど自分から絡むつもりはない(少し朋也側よりなので、絡みたくない気持ちの方が強い)、という場所に位置する智代(しかも春原・朋也と大きく距離を取っている)。
最初はこういう位置でありながら、春原をボコっている内に、それなりに楽しめた智代。ただ迷惑で二度と来て欲しくないなら、何も言わずに去ればいいのに、「昔を思い出した」と、少しだけ、楽しめたことを告げる。迷惑ではあるけど、ちょっとくらいなら好ましいものでもある、ということを示唆しています。線の区切りも無くなって朋也と正面から向かい合って喋るのですが、動いていれば立ち位置なんて変わるから線がどうこうなんて関係なくなるんだけど、その動いて楽しめた結果、心の立ち位置が変わって、朋也と向かい合い喋る。
こうやって春原や朋也に付き合える智代は、他の他人と一緒に居る時の智代とは少しだけ違う。
他人との出会い。すれ違いにならずに、少しでも同じ時間を過ごせたら、少しでも同じ道を歩めたら。それが少しづつ、自分を変えるものになっていく。

「とんかつっ!」
自分を励ますため、自分が食べたいものの名前を言う。
自分で自分にご褒美。それはおかしなことじゃない、朋也が言うように「変じゃない」のですけど、でも、『ひとりぼっち』だということを強調していることでもあります。自分をはげますのが自分自身で、自分にごほうびをあげるのも自分自身。
空しい一人回しでもあるし、それ以上に、これで何処まで力が続くのか・出せるのか。
演劇部の扉を開く為に、学校の坂を登るたびに。あんぱんやハンバーグと言うだけで、自分にご褒美を与えるだけで。はたして、何処まで頑張れるのか。いや、それ以前に、ご褒美があっても足が進まないような困難や壁にぶつかった時、はたして、どうやってその先に進めるのか。あんぱんやハンバーグやとんかつと言った所で、一歩も、勧めない時。からかわれて、悲しくなって、落ち込んで。そこから、ひとりで、ただ好きな食べ物を頼りに、先に歩いていけるものなのか。
ひとりでは、ひとり(自分)の限界から先へは、どうしたって進めない。

だから。
朋也の、「とんかつより、だんご大家族買って帰ろうぜ」という台詞に、満面の笑みを浮かべる。もちろん、とんかつよりだんごを食べたいからじゃなくて。一人じゃなくて、一緒に居てくれる人がいることに。朋也が……誰かが、自分のために何かをしてくれるということに、とんかつやあんぱんと言って自分で自分を励まさなくても、自分を励ましてくれる誰かが隣にいてくれることに。自分ひとりでないということは、本当に、勇気を与えてくれるものだから。
だから、踏み出せるのです。『最初の一歩』。

「朋也は本当は今も、バスケがやりたいんじゃないかな?」と思った渚が、朋也をバスケットボールに誘う。
誰に強要されたわけでもないし、誰も求めているわけでもない。ただ、そうしたいから。自分のために色々してくれる朋也に、自分も何かをしてあげたいから。渚自身のように、自分ひとりでは踏み出せないなら…そのお手伝いをしてあげたい。自分を励ましてくれたり、勇気を与えたりしてくれた人に、自分もそのようなことをしてあげたい。
誰に強要されたわけでもないし、誰も求めているわけでもない。でも、自分自身で、そうしたいと思ったから。助けられるだけじゃなくて、助けたい。そういう意思の表れ……渚が『自発的に』朋也に何かをする、その『最初の一歩』です。
そして、朋也にとっても。

三年も前に怪我した右肩、上がらない腕、まだ嫌いにすらなっていないバスケ。
三年前の怪我ならば、それに諦めも決着も自分の中ではある程度ついているでしょう。きれいさっぱり何とも思っていない、なんてことは、風子のドリブルシュートの後の一瞬の躊躇から見て取れるように、恐らく無いでしょうが、風子にバスケの話題を自分から持ち出せるように、そこに強い悲壮感は無い。
悲壮感はないけれど……渚に、そのことを言わずにいた。
朋也がなんでここまで渚に優しくしたり励ましたりするのかというと、渚に「求められている」という面が大きいかと思います(現時点では)。なんとなく手を貸したら、それに応えてくれて。ひとりじゃすぐ立ち止まっちゃうから、なんとなく手を差し伸べたくなって。自分のやることが、確実に渚のためになり、自分が何かしないと、きっと渚は立ち止まってしまう。朋也が何故わざわざ、渚のために何かするのか。何でわざわざ、団子を買ってきてだんご大家族を作るのか。それが渚のためになると分かっているから。自分が誰かのためになれて、だから、自分が誰かに必要とされている。あくまで、この時点での、一番の動機。
そんな、励ます対象であり、勇気付ける対象である渚だからこそ、励ますことにも勇気付けることにも繋がらない、自分の怪我のことを黙っていた。
でも、そのことを打ち明ける。これを言って、渚が励まされるわけでもない。喜ぶわけでもないし、勇気付けられるわけでもない。そんなことを言うということは。励ます必要があるから・勇気付けた方がいいから一緒に居る、ということから脱却すること。学校に向かう坂道で立ち止まる背中をなんとなく押してあげたり、ひとりでは遅々として進まなそうな演劇部再建をちょっとだけ後押ししたり、そして演劇部が再建できて一人でやっていけるようなら……もう自分が必要ないようなら、渚の隣にいなくてもいい。
そういった関係からの脱却。深く付き合うための、最初の一歩。
このうなだれる姿は、悔恨でも、悲しみの吐露でもなく、自分が渚を励ますだけでなくなってしまうことへのうなだれ。渚のためだけでなく、自分自身を語り、自分自身を知ってもらい、そこからはじまる新しい道。そこへの、『最初の一歩』。
ただ励ますだけという朋也と、ただ励まされるだけという渚。その境界を越える、最初の一歩。

この世界に生まれてくれることを望み、この世界に生まれることを望む。
もうひとつの世界の方でも、それぞれが『最初の一歩』目を踏み出しました。
望み、生まれて、望まれ、生まれる。
選択し、選択させられ、日々踏んでいる一歩一歩は、関係を少しづつ変えていきます。踏み出さなかったという選択肢は既に選べなくなっている。昨日までは明確にあった境界線はいまはもうないか、別の所に引かれている。その先には、この一歩を踏み出したからこそ得る幸せと、この一歩を踏み出したからこそ得る辛さが、たくさん、あるでしょう。
でも、それを無かったことにはできない。
出会ってしまい、声をかけて、接触して、接触されて、必要とされ、必要とする。選択肢を選び取る、その『最初の一歩』。その積み重ねで決まっていく道。はたしてそれは、何処に続いていくのか。どういった次の一歩を踏み出していくのか。その先が楽しみです。
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(アニメ感想) CLANNAD -クラナド- 第2話 「最初の一歩」
CLANNAD 1 (初回限定版)演劇部の復活を目指し頑張る渚に、協力する朋也。だが、そんな彼にはある秘密があった・・・。
2007/10/14(日) 05:21:31 | ゲームやアニメについてぼそぼそと語る人
CLANNAD-クラナド-の第2話を見ました。第2話 最初の一歩「もしよろしければ、あなたをお連れしましょうか?」「え?」「この町の願いが叶う場所に」「あ…」「こんな所で何してるんですか?」「うぇ!?」「何か家に忘れ物ですか?」「いや、散歩してただけだ。お前、今のは?...
2007/10/14(日) 07:22:56 | MAGI☆の日記
CLANNAD -クラナド- 第02話 「最初の一歩」観賞~^^
のとみ&ふうこ登場~\(^O^)/第2話を観賞しました~^^
2007/10/14(日) 08:22:37 | まごプログレッシブ:Part2~Scenes From A Memory~
渚が演劇部再建をするために頑張る決意をします。正直、言うと演劇部再建のところはあんまり好きじゃなかったり(ぇーw
2007/10/14(日) 08:38:49 | リリカルマジカルS
なるほど。前回の「あんぱんッ!」も、自らを奮い立たせる為の言葉だった訳ですか。ようやく納得。ちなみにトンカツでしたら渋谷の蓬莱亭がオススメです。本店は場所がちょっとわかりにくいかもしれないですが、東急プラザ9
2007/10/14(日) 08:52:02 | BLOG不眠飛行
新キャラ続々と登場する第2話。今後が楽しみですね。それにしても超展開すぎますねw
2007/10/14(日) 10:25:01 | ネギズ
<藤林杏はバイ(ry>いきなりバイクで後ろから突っ込んできておいて「ちょっと、気をつけてよ!」と朋也に文句を言うとは、、そりゃないだろ~、一応朋也は歩道歩いてたぞ(笑)し...
2007/10/14(日) 11:21:31 | ムメイサの隠れ家
アニメだと幻想世界が、はっきりと描かれているのですね。
2007/10/14(日) 13:05:45 | ゼロから
最初の一歩少女の生活は孤独だった・・・
2007/10/14(日) 14:00:01 | 紅日記~ベニッキ~弐号館
CLANNAD -クラナド- お勧め度:普通+ [恋愛アドベンチャーゲーム] TBS : 10/04 25:55~(初・26:25~) MBS : 10/13 25:55~ CBC : 10/17 26:50~ BS-i : 10/25 25:00~ 原作 : Key/ビジュアルアーツ 監督 : 石原立也 シリ....
2007/10/14(日) 14:17:13 | アニメって本当に面白いですね。
CLANNAD -クラナド- お勧め度:普通+ [恋愛アドベンチャーゲーム] TBS : 10/04 25:55~(初・26:25~) MBS : 10/13 25:55~ CBC : 10/17 26:50~ BS-i : 10/25 25:00~ 原作 : Key/ビジュアルアーツ 監督 : 石原立也 シリ....
2007/10/14(日) 14:17:24 | アニメって本当に面白いですね。
CLANNAD -クラナド- 第2話感想いきます。
2007/10/14(日) 14:19:46 | AAA~悠久の風~
第2話 最初の一歩やはりCLANNADはガチです。つーかこのアニメだけはOP見入ってしまいます。最終回までちゃんと見るでしょう。CLANNAD 1 初回限定版 ◆先着予約特典:オリジナルミニノート(B5サイズ)...
2007/10/14(日) 15:51:31 | えたなるお~しゃんA’s
CLANNAD -クラナド- 初回限定版「お連れしましょうか…この町の願いが叶う場所に…」それは渚がやりたいと思っていた演劇の中の台詞だった。そしてこの手が本当に差し伸べられる...
2007/10/14(日) 16:15:36 | ワタシ式ドロップス
結局寝れなかったorz CLANNAD 第2話 『最初の一歩』 感想 岡崎朋也: 中村悠一 古河 渚: 中原麻衣 藤林 杏: 広橋 涼 藤林 椋: 神田朱未 坂上智代: 桑島法子 伊吹風子: 野中 藍
2007/10/14(日) 16:48:48 | 荒野の出来事
とりあえず主人公は色々イベントあって大変そうだな今回だけで何人の女の子とフラグ立ててるんだか・・・・あとこの学校にまともな女の子はいないのか?まぁいままでのキャラはともかく今回出てきた2人は電波すぎてちょっと・・・・とひいてしまいましたいやまぁAIRで...
2007/10/14(日) 20:56:14 | にき☆ろぐ
演劇部員募集中。
2007/10/14(日) 23:14:44 | Hiroy's Blog
= 第2話 「最初の一歩」 ={{{先週の渚の意味深な発言は、お芝居の練習というオチでした。そういや演劇部希望でしたね。そして再び過去の回想シーン。何かの部品を積み上げるところはかなり書き込んでましたね。CGか?初っ端からいきなり突っ込んできた杏。あの原付は恐らくホ
2007/10/14(日) 23:29:12 | MEGASSA!!
かなりマジ!CLANNADの第2話です。まだまだキャラクターの紹介的な内容ですが、主役二人、朋也と渚の関係については随分進んでいます。でも先週は「ちょっと速いな...
2007/10/14(日) 23:49:45 | 中濃甘口 Second Dining
幻想世界のシナリオもちゃんとやっておりますが初見の人とか、私みたいの初心者じゃ未だに意味が分からない気がするorz手をのばしてくるあたりの動きが3Dみたいな感じでなんか怖...
2007/10/15(月) 00:46:18 | 今日もやられやく
”もしよろしければ、あなたをお連れしましょうか? この街の願いの叶う場所に――”家を飛び出した朋也が訊いたのが、渚の一人芝居の言葉。演劇部を復活に動く彼女に朋也も協力することに…新キャラ続々登場の第2
2007/10/16(火) 22:23:37 | SERA@らくblog
少女の生活は孤独だった
2007/10/19(金) 06:24:16 | 空色☆きゃんでぃ
CLANNAD第2回を、しっかり観ました。感想、その他を書きたいと思います。以下の記事中には、反転させてありますが、私の書いたものの中では最凶にして最悪のネタバレがあります。ご注意下さい。てすと
2007/10/21(日) 22:59:36 | 丈・獅子丸の咆哮 (新館)
これは・・・ですねぇ・・・・・ /::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::\::::::::::\ /:::::::::::::::::::::::/::::::::l:::::ヽ::::::::::::::、:::::::::::::\::::::::::ヽ ...
2007/10/25(木) 22:37:09 | ルーツ オブ ザ まったり!
こんばんは、たこーすけです。「CLANNAD」第2話を視聴しましたので、その感想を書きたいと思います。原作ゲームは未プレイです。以下、原作未プレイ者が好き勝手に感想を書いています。とんちんかんな点も御座いましょうが、どうか御了承下さい。また、第2話までの内容・
2007/10/27(土) 03:39:10 | たこーすけの、ちょろっと感想
「もし、よろしければ…あなたを、お連れしましょうか?この町の願いが叶う場所に。」 渚の幻想的な雰囲気に、息を呑む朋也。「お前、今のは…?」思わず、訊き返してしまう。直後、渚が芝居の練習をしていたと判明。演
2007/10/29(月) 21:28:36 | yukitaの想い出日誌
夢。夢を見ていた。終わってしまった夢。二度と見られない夢…。もう見てはいけない夢…。 なっ、名雪さ(いや…それじゃないだろ…)
2007/11/02(金) 20:34:39 | Old Dancer's BLOG
[京アニCLANNAD]テレビアニメ『CLANNAD』(BS-i)第02話「最初の一歩」ネタバレおぼえがき(その1)
関東圏・TBSでの放送から3週間遅れ(実質4話遅れ)の挙句,さらにBS-iでの放送からタイムラグがあるという,ひどく執筆のモチベーションが下がりっぱなしな箇条書き。何が得られるのかは,やってみないと分からない。長文を速記できる才能がほしい(切実に)。でも,がん
2007/11/06(火) 00:53:55 | milky’s memorandum on ”rosebud”
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