2009'05.07 (Thu) 00:28
![]() | 星図詠のリーナ (一迅社文庫) (2009/04/20) 川口 士 商品詳細を見る |
正統派ファンタジー……? いや、僕はファンタジーってのがよく分からないので、何ともいえないところなんですが。
聡明でお優しく芯の強い美丈夫的な王女様が地図を作るぜ~超作るぜ~とはりきる物語。決してつまらなくはないけど(てゆうか僕は、つまらなかったものの感想は書きません(そもそも読了に至りません))、うーん、世間の評判がいくらなんでも高すぎる気がする。
世界観の説明を語句(説明台詞)だけで済ませるのではなく、さりげなく普通にあたかも当り前のように「犬の魔物」とか出して「そういうのがいる世界なんですよここは」と説明している点は秀逸な丁寧さですね。「ここは魔物がいる世界」などと書かないで、ただ作中にぽんと魔物が存在する。「ここは魔物がいる世界」なんて書くと、”ここ”以外――つまり読者たるわたしたちの世界が、それと相対化され、顕在化し、つまり意識されてしまいますが、そういうのを、説明ではなく「当然」として書くことによって回避しています。乖離的な世界ではなく、少なくとも本の中には実存的な世界が、そうすることによってここに出来上がっているわけです。
この丁寧さは素晴らしいです。全編通してこう丁寧なんですが、これが「地図を描く」という目的(欲望)と相克している。作り手の恣意性が排除された、実存的世界像が示されているからこそ、「地図を描く」という行為が、”意義のあるもの”としてわたしたちに受け止められるわけです。
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